お庭からベランダ、エクステリアなどガーデニング回りをスタイリッシュに演出

 

専門家「風景」をつくるガーデニング術

園芸YouTubeチャンネル「ショクナナ!」第9回目 動画配信!(実験集合住宅 NEXT21編)

居場英則

10月に入り、今年も残すところあと3ヶ月になりました。

暑さもずいぶんと和らいだと思いきや、今度は一気に肌寒さを感じる季節になってきました。


さて、この春から、知り合いのTVディレクターのお誘いで、関西発の園芸YouTubeチャンネル『ショクナナ!

〜植物と遊ぶ7日間〜』の「暮らし」をテーマにした月曜日の講師陣の一人として登壇させていただいています。

これまでは、我が家の庭やインドアガーデン、僕がデザインさせてもらったバラ園や友人宅の庭などを

ご紹介させていただきましたが、今回からは少し視点を変えて、僕の本業である街づくりや建築空間の中で

「緑のある暮らしの風景」をご紹介しいたいと思います。

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その第一弾として、今回ご紹介させていただくのは、大阪ガスさんの実験集合住宅、

「NEXT21」という建物です。

大阪市内のど真ん中、上町台地の集合住宅やオフィスビル群が建ち並ぶ一角に、

突如として現れる近未来住宅(集合住宅)です。

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大きすぎて全景を写真で納めるのが難しい建物です。

近未来住宅といってもこの実験集合住宅が建設されて、すでに29年が経って

いるのですが、緑に覆われた建物は、周囲のマンションやビルと比べても

明らかにその異質さが際立っています。

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こちらは、ひとつ上の写真の裏側、建物の南側の外観です。

一般的な集合住宅と建物配置の考えから異なっていて、建物南側にコの字に共用廊下が張り巡らされ、

その共用廊下に囲まれるように、地上階にガーデン、各階の共用廊下に壁面緑化が施されています。

大阪市内という大都会の中の集合住宅に、これほどまでの緑の空間(都市緑化空間)があるのは

非常に珍しいと思います。

この建物は、エネルギー会社である大阪ガスさんが、「暮らし」、「エネルギー」、「環境」をテーマに

社員の方々が実際に住みながら、様々なデータ収集し、未来の暮らし方の提案のための実証実験をされています。

一般公開はされていませんので、外からは見えても内部がどのようになっているのか分からないと思いますが、

今回、大阪ガスさんのご協力を得て、園芸YouTubeチャンネル「ショクナナ!」にて、取材をさせていただける

ことになりました。

貴重な「都市緑化空間」を皆様にご案内させていただきます。

ご興味がある方は、是非ムービーをご覧いただけたらと思います。


詳細はムービーをご覧いただくとして、ざっと「実験集合住宅・NEXT21」を静止画を使ってご紹介しておきます。

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こちらは、建物南側中央にある、「エコロジカルガーデン」と呼ばれている、NEXT21の中で最も大きな緑地

スペースです。

1階の前面道路と同じレベルから、地下1階へ斜めに下っていくサンクンガーデンで、斜面を蛇行しながら

せせらぎが流れています。

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YouTubeのムービーで紹介するのと同じルートで、館内をぐるりと巡るように案内します。

EVで一気に最上階の6階へアプローチします。

6階の共用廊下には、ロープを使ったフジ棚が設けられていて、ゆくゆくはここに満開のフジの中でトンネルを

つくりたいと構想しているエリアです。

(実は、フジの剪定指導もお手伝いさせていただいています。)

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こちらは、1階下がった5階の共用廊下の一角。

共用部のところどころにこのような緑地スペースが設けられています。

管理は、この場所に一番近い住戸の方がされていて、どんな植物を植えるかも、入居所に委ねられています。

このあたりも一般的な集合住宅とは異なる点で、「共用部緑化」という視点ではとても有意義な試みだと思います。

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こちらは、5階にある空中ブリッジです。

この「実験集合住宅・NEXT21」では、このような空中ブリッジが2本架けられていて、

共用部をぐるっと回れるような回遊性のある空間となっています。

大阪ガスの方にをお聞きすると、住民のお子さんがこのブリッジを自転車を漕いで渡るそうです。

結構な高所にあって怖いのですが、子供にとってはちょっとした冒険の空間なのかもしれません。

こういう遊び心がある設えはいいですね。

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こちらは、5階の空中ブリッジから、住棟方向を見たアングル。

実験住宅ならではの、太陽光発電パネルが廊下の手すりに設置されているのがよく分かります。

面白いのは、廊下側のコンクリート柱部分に、様々な植栽がまとわりついている様子です。

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その様子を上から見下ろしたのがこちらのアングル。

スタジオジブリ制作のアニメ映画、「天空の城、ラピュタ」に出てきそうな、建物が緑に包まれた空間が

視界に広がっています。

建物の一番底の部分には、冒頭でご紹介した「エコロジカルガーデン」が見えています。

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こちらは4階の共用廊下部分。

こちらは、この共用廊下に面した住戸(写真右側)の専有使用部分として、「縁側」として活用されています。

縁側(ウッドデッキ張り)部分に腰かけて、外の風景を眺めることができるようになっています。

共用廊下部分には、目隠しも兼ねた植栽スペースが設けられています。

通常の集合住宅ではなかなかこのようなことは実現できないと思いますが、実験集合住宅ならではの使い方だと

思います。

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こちらは、3階の共用廊下部分。

上の写真で見てきた「ラピュタ」的な植栽(コンクリート柱に巻き付いたつる性の植物)の株元部分です。

担当者の方にお聞きすると、計画的に植栽したものではなく、自然発生的に生えてきたものだそうです。

共用廊下の反対側(画面左)に、コの字配置の両端をつなぐ2本のブリッジが見えています。

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3階のブリッジのたもとから、反対側を見たところ。

このあたりは、バルコニーの手すり部分の植栽が最も大勢に見えるエリアです。

地上階の緑化空間(いわゆる庭、ガーデン)が豊かな集合住宅は珍しくありませんが、

廊下の手すりなどの壁面を使った緑化空間は、なかなかここまでの事例は少ないと思います。

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3階のブリッジから、住戸側を見たアングル。

大阪ガスの担当者の方のお話では、近くの大阪城公園から飛来する野鳥が、このNEXT21の屋上庭園から

この壁面緑化空間を伝って、1階のエコロジカルガーデンへと降りてくるそうです。

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3階のブリッジの対岸側から見たアングル。

この立体的に囲まれた「井戸空間」のような緑化空間が、このNEXT21の

特徴的空間ではないかと思います。

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2階の共用テラスから見る、NEXT21のダイナミックな立体緑地空間。

住民の方が、共用廊下やブリッジを巡りながら館内を散歩されると、

様々に見え方が変化する立体緑地を楽しむことができるようになっています。

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2階の共用テラスから見下ろす、中庭空間(エコロジカルガーデン)。

南側の前面道路のレベル(1階)から地下1階への斜面地としてデザインされています。

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その斜面を使って、蛇行しながらせせらぎが流れています。

植物が水を吸い上げ、気化する際に熱を奪いますが(気化熱)、その影響もあってか、NEXT21の中庭空間は

見た目だけでなく、実感としてもひんやりと涼しい空間になっています。


ざっと、駆け足で大阪ガスさんの「実験集合住宅・NEXT21」の緑化空間をご紹介してきましたが、

如何でしたでしょうか?

動画では、さらに詳しく解説していますので、ご興味があれば、是非ご覧ください。

次回ですが、「緑のある暮らしの風景」の第二弾として、神戸市東灘区にある、建築家・前田由利さんのご自宅兼

アトリエ(一級建築士事務所)のある建物をご紹介します。

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前田由利さんは、「草屋根の家」の第一人者としてご活躍されています。

その「草屋根の家」の第一号が、こちらのご自宅兼アトリエです。

実は、僕と前田由利さん、意外な接点?があります。

そのあたりも、来週10/10(月祝)に公開予定の動画でお話しております。

乞うご期待ください。


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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