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専門家「風景」をつくるガーデニング術

革新の寺、京都・建仁寺の庭

居場英則

10月に入り、急に涼しくなり、秋めく今日この頃です。

あれだけ暑かった夏が今となれば懐かしくさえもあります。


さて、今回は前々回ご紹介した「重森三玲庭園美術館」につづき、「訪ねてみたい名庭園」シリーズの2回目、

京都市内の中心部、祇園にほど近い場所にある「建仁寺」の庭園をご紹介したいと思います。

建仁寺は、京都市東山区にある臨済宗建仁寺派大本山の寺院です。

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建仁寺は、京都市東山区にある臨済宗建仁寺派大本山の寺院で、鎌倉時代・建仁2年(1202年)、

将軍・源頼家が寺域を寄進し、栄西禅師を開山として建立されました。

その建仁寺といえば、こちらの「風神雷神図」。

俵屋宗達の代表作で、国宝に指定されています。

二曲一双屏風で、左に雷神、右に風神が描かれています。

現在、本物は京都国立博物館に寄託されているそうで、建仁寺には高精細デジタル複製作品の屏風画が

展示されています。

レプリカとはいえ、実物を間近に見ることができ、とても臨場感がありました。

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もうひとつ、建仁寺で有名なのが、こちらの法堂の天井画「双龍図」。

平成14年、建仁寺創建800年を記念して、小泉淳作画伯が約2年の歳月をかけて

取り組んだまさに大作で、畳108畳分の大きさがあるそうです。

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天井に描かれた双龍図の「法堂」から渡り廊下を伝って方丈へと向かう途中、

銅鐸のような形に切り取られた窓があります。

写真は、その窓から見える「方丈」の軒先。

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こちらが、寺の中心的な建物で「方丈」、重要文化財にも指定されています。

もとは安芸国の安国寺にあったものを、安国寺恵瓊が慶長4年(1599年)に建仁寺に移築したもの。

屋根は、瓦葺きや銅板葺きであった時代もあるそうですが、現在は創建当初の柿葺で修復されています。

その方丈の前(南)に作られているのが、建仁寺のメインの庭、「大雄苑」(だいおうえん)です。

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こちらは、方丈から南方向に広がる庭、「大雄苑」を見たところ。

正面の唐門の向こうに聳えるのが、天井画「双龍図」が描かれている建物、「法堂」。

枯山水様式の「大雄苑」(だいおうえん)は、昭和15年(1940年)に、

昭和の天才作庭家「植熊」 の三代目・加藤熊吉により作庭されたもので、

中国の百丈山の眺めを模して造られたと言われています。

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方丈の大きな縁側には、多くの観光客の方が腰かけ、目の前の枯山水庭園と向き合っておられました。

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抽象化されたデザインの白川砂の砂紋に、アカマツ、七五三に配置された景石がバランスよく配置され、

とても雄大で凛とした佇まいの枯山水庭園です。

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広縁のコーナー部分に配された、白川砂による波紋のデザイン。

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3つの石を2つと1つに分けた石の配置、その廻りの白砂が作り出す「間」。

この風景を美しいと感じ、愛でることができる日本人の感性が素晴らしい。

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こちらは、方丈の北側。

奥に見えるのが小書院。

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こちらは、方丈の北側に配置された「納骨堂」。

直線的な模様の白川砂の庭を横切るように、踏み石を雁行させながら配置しています。

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横から見たところ。

縁側から犬走り、軒下の砂利敷、そして白砂の庭へと変化していく直線的なデザイン。

何気ない空間ですが、とても美しい軒先の空間です。

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こちらは、方丈と小書院の間に作られた坪庭のような空間で、「〇△□乃庭」と名付けられています。

平成18年(2006年)に、現在の日本を代表する作庭家・北山康夫さんが手掛けられた、まだ新しい庭です。

〇△□という図形は、宇宙の根源的な形態を示し、全周の四大思想(地水火風)を、地(□)水(〇)火(△)で

象徴したものと言われています。

〇は中央の苔山と砂紋、□は井戸、△は白砂のエッジ部分で表現されているそうです。

どこか哲学的な雰囲気のする空間です。

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続いては、小書院と大書院という2つの建物の間に作られた庭、「潮音庭」。

こちらは、作庭家・北山康夫さんの監修のもとに、小堀泰嚴住職により作庭されたものです。

写真は、方丈から続く小書院側から大書院方向に向かって潮音庭を見たところ。

小書院と大書院は庭の両側にある渡り廊下でつながれていますので、

潮音庭は四方から眺めることができる中庭のような空間となっています。

庭の中央に石が組まれ、その周りを紅葉の木が取り囲み、地面は苔で覆われています。

建仁寺を訪れたのは3月だったので、まだ新緑も芽吹かず、少し寂しい風景ですが、

秋の紅葉の季節には、美しい風景を見せてくれると思います。

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こちらは、潮音庭を横(渡り廊下)から見たところ。

右(南側)が小書院、左(北側)が大書院、庭の向かい側には、もう一方の渡り廊下が見えます。

小書院、大書院、2本の渡り廊下のどこから庭を見ても、表に見えるように石や木が配置されています。

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こちらは、斜めから見たところ。

右側の建物が小書院です。

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こちらは、庭の北側にある大書院から、南の小書院方向を見たところ。

こちらの建具は障子ではなくガラス戸。

それでも建具に切り取られた(縁取られた)絵画のような風景です。

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こちらは小書院の襖絵で、「開山栄西禅師八百年大遠諱慶讃事業」として、

染色画家の鳥羽美花氏によって描かれたもので、「舟出」という作品です。

襖絵といえば、唐招提寺の御影堂の東山魁夷画伯による襖絵が有名ですが、

ここ建仁寺の非常小書院の襖絵は、鮮やかな色彩に目を奪われます。

建仁寺のHPのギャラリーには、潮音庭のモミジが真っ赤に紅葉して、その奥にこの青い襖絵が見える

写真が掲載されていますが、とても美しいです。

由緒ある寺院といえば、古い格式や伝統を守るというイメージがありますが、

ここ建仁寺では、冒頭にご紹介した「風神雷神図」や、平成になって描かれた法堂の「双龍図」、

庭では、昭和につくられた方丈庭園「大雄苑」や、平成に入って作られた「〇△□乃庭」、「潮音庭」など、

その時代時代の新しい感性を取り込んだ革新的な芸術が表現されています。

そういう意味で、とても刺激的なお寺でした。


如何でしたでしょうか?

建仁寺は、京都の中心部、四条河原町や祇園からもほど近い場所にある寺院です。

是非、京都を訪れた際にはお立ち寄りいただきたい、おススメの場所です。

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【 京都・建仁寺 について 】

   住所:京都市東山区大和大路四条下る小松町

    TEL:075-561-6363

     ※ 詳しくは、以下↓の建仁寺のHPをご覧ください。

       https://www.kenninji.jp/

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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