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専門家「風景」をつくるガーデニング術

我が家のつるバラ誘引風景

居場英則

今年ももう11月の半ば、年末まであと少しとなりました。

今年は夏以降、天候不順が続き、どこも秋バラの成績が良くないみたいですね。

我が家も、ご多分に漏れず散々な状況です(汗)。

そんな中、秋バラに見切りを付けて、早くも来春への準備として、つるバラの誘引を始めておられるロザリアン

の方もおられると思います。

今年の冬は寒いとの予報もあり、早めにつるバラの剪定、誘引を終わらせておきたいとお考えの方も多いのでは

ないかと思います。

我が家でも、毎年12月に入りましたら、一季咲きのランブラー品種のつるバラを皮切りに、誘引作業を始める

つもりにしています。

そこで、今回は、昨年冬に行った我が家のつるバラの誘引風景を見ていただきながら、「誘引と風景」について

記事を書いてみようと思います。

ご自宅のつるバラの誘引作業を前に、何か参考になれば幸いです。

我が家のつるバラは、かなりの本数もありますし、建物や外構のフェンスや壁面など、多岐にわたって

様々な誘引方法を試みておりますので、1回では紹介しきれないので、2回に分けてご紹介したいと思っております。

第1回目は、我が家の前庭に焦点を当てて、いくつかの事例をご紹介いたします。


● 前庭・メインゲートを囲むつるバラの誘引風景

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まずは、こちらの写真をご覧下さい。

我が家の前庭から中庭へと続く、ガラス扉がある壁面です。

毎日の出入りやお客様をお迎えするメインゲート的な場所で、我が家の庭の中では最も印象的な風景を作る、

重要な部分になっています。

割肌調の白い大理石タイルを貼っている建物外壁面に、左右の壁から幾重にもつるバラを重ねるように

誘引しています。

写真外側に地植えの大型のつるバラとして、右側からキングローズ、レッド・キャスケードを、画面左側から、

ジャスミーナとドロシー・パーキンスを誘引しています。

その内側は、地面が乱張り石で固められているために、大型のテラコッタ鉢を使って、中型のつるバラを誘引して

います。

ガラス扉の右側には、アントニオ・ガウディ、左側にレオナルド・ダ・ヴィンチを壁面に誘引し、

それに並べるように、シュラブ樹形のレッド・レオナルド・ダ・ヴィンチを植えたテラコッタ鉢を配置しています。

男性のボクがバラを育てていることもあって、我が家では、なるべくフェミニン(女性的)にならないように、

アーチは一切使っていませんが、ここでは壁面を使って左右からつるバラを伸ばし、ガラス扉の上で交差する

ように、アーチ風の風景をデザインしています。


● 中庭へ誘うつるバラのアーチ

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こちらは、今年5月のバラの開花時期の様子です。

淡いピンク(ジャスミーナ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アントニオ・ガウディ、ドロシー・パーキンス)や

ローズピンク(キングローズ)、赤(レッド・キャスケード、レッド・レオナルド・ダ・ヴィンチ)というように、

ピンク〜赤の同系色でまとめています。

背景となる壁面が白い大理石タイルということもあって、コントラストが強調されて、

バラの花を一層際立たせています。

また、大型のつるバラ(ドロシー・パーキンス、キングローズ、ジャスミーナ、レッド・キャスケード)は、

小輪〜中輪の房咲きの多花性品種を選んでいるため、ボリューム感が出ます。

かなり派手な色合いですが、同系色でまとめていることもあって、建物外壁ともうまく調和しながら、

印象的な風景を作り出せているのではないかと思っています。


● 数多くのつるバラを誘引している前庭の建物外壁、「パレット」

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前庭に面した建物外壁全体が分かるようにもう少し引いて撮影したのがこちらの写真です。

上で説明しましたガラス扉周辺は、建物全体で見るとごく一部分になります。

大部分は、ガラス扉の向かって左側に広がる大きな白い壁面です。

この白い大理石タイルを貼った壁面を、ボクは「パレット」と称しています。

画家が絵の具を混ぜる、あの「パレット」です。

何故、「キャンパス」ではなく、「パレット」なのか?

「キャンパス」は、まさに絵を仕上げるためのものですが、「パレット」は絵の具を混ぜて描きたい「色」を

作り出すフィールドです。

我が家のこの大きな壁面は、まさに「パレット」そのもの。

完成させる「絵」ではなく、いつまでも完成しない、毎年のように変化する「パレット」と呼んだ方が

しっくり来るのです。

毎年、試行錯誤しながら、つるバラという「絵の具」を使って、表現したい色を作り出すフィールドなんですね。

この「パレット」は、バラが開花する5月の風景が最も美しいのですが、それ以外のシーズン、特に誘引後、

葉が芽吹くまでのツルだけしかない時期にも美しく見せられるように配慮してデザインしています。

バラが満開でいる期間は、2週間ほど。

それに比べて、ツルだけの時期は12月から2月末くらいまで、約3ヶ月間もあります。

その期間も美しい風景になるよう、つるバラの誘引には気を配っています。

たくさん花を咲かせるように、水平にツルを誘引する部分もありますが、なるべく波紋状に枝を誘引していくように

心がけています。

また、もうひとつ着目していただきたい部分が、写真の左下部分です。

前庭の大部分は駐車場になっている関係で、地面は乱張り石が敷き詰められており、土がある部分は

ほんのわずかです。

大きな壁面を覆うようにつるバラを誘引するために、鉢植えのつるバラを多用しています。

画面で見える範囲で、この壁面に11種類のつるバラを誘引していますが、そのうち地植えのつるバラは

たった4本。

あとの7本は、テラコッタ鉢に植えたつるバラなんです。


● 鉢植えのつるバラでも、大きな壁面をカバーすることができます

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こちらが、今年5月の最盛期の様子です。

前庭に面した「パレット」(大きな白い壁面)が、赤やピンクの花で埋め尽くされています。

ここで注目していただきたいのが、先ほど書きました鉢植えのつるバラを誘引風景です。

画面左側の4つのテラコッタ鉢から延びたつるバラが、まるでタペストリー画のように密に花を咲かせています。

ここに誘引しているつるバラは、手前(左側)から、ブレイズ、レッド・キャスケード、アントニオ・ガウディ、

キングローズです。

昨年は、別の品種を植えていたのですが、開花期が合わず、歯抜けのようになってしまったので、

今年は、同じ時期(全体的に遅咲き傾向のバラです。)に開花するバラに変更しました。

その甲斐あって、今年はこの「パレット」全面で、ほぼ同時期に開花してくれました。

鉢植えでも、地植えのランブラー品種に負けないくらい、たくさんの花を咲せることは出来るのです。

また、この4本のうち、レオナルド・ダ・ヴィンチの枝代わり品種であるアントニオ・ガウディ

(別名、シルバー・レオナルド・ダ・ヴィンチ)以外の3品種は、スペア用に作った挿し木苗で育てています。

しかも、この「パレット」は西向きの壁面でもあります。

西日の強い壁面は、つるバラの生育には環境条件が厳しいとも言われますが、我が家の前庭では、まったく関係なく

元気に育っています。

うまく品種を選べば、西向きでも、鉢植えでも、密植していても、十分に期待以上の成果を出すことができる

のではないかと考えています。


● 玄関アプローチの外構壁面に誘引したつるバラ風景

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こちらは、前庭の玄関アプローチ部分を撮影した一枚です。

画面右側に見えている壁は、隣地境界沿いのブロック塀です。

ここにも、建物の外壁と同じ、白い大理石タイルを貼っています。

この壁面にもつるバラを誘引しています。

この壁面は、高さ1.5mほどですが、画面右側が方位でいうと南になります。

従って、つるバラを誘引する壁面は北側(北向き)ということになります。

隣接する建物や、隣地境界塀そのものの影になる壁面ですが、玄関アプローチを彩る重要な壁面なので、

ここには、四季咲き性の強い品種のつるバラ、アンジェラを誘引しています。


● 壁面のみならず、引き込み電柱も使って立体的に誘引

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こちらが、今年5月の開花時期の様子です。

隣地境界のブロック塀に誘引したつるバラ、アンジェラは北向きにも関わらず、何の問題もなくたくさんの花を

咲かせてくれました。

太陽を求めて、塀の上の方へとツルを伸ばすため、ブロック塀の壁面よりかなりボリュームアップしています。

また、今年は引き込み電柱のポール部分にも、ツルを間配って誘引したので、かなり高い位置でも

たくさん咲きました。

いわゆる「ポール仕立て」です。

こうすることで、壁面とポールという、より立体的な演出ができました。


● 外構の小壁につるバラを誘引

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こちらも、我が家の前庭の一部、丹波石を積んでつくったロックガーデンの小壁です。

この小壁の向こう側(道路側)には、我が家のシンボルツリーの株立ちのエゴノキが植っています。

道路から直接見えない手前側の壁面を使って、壁の左右から2本のつるバラを誘引しています。

少し見えにくいですが、ツルを固定するために、壁面に30センチほどの間隔で

ステンレスワイヤー(針金)を4本張っています。

この幅・約2メートル、高さ・約1.5メートルの、ごく限られた小さな壁面を

効果的に演出するために、壁の上下につるバラを配置しました。

壁の右側からは、一重咲きのつるバラ、モーツアルトを、

左側からは、オールドローズのアンリ・マルタンを誘引しています。


● 同系色で花形が異なるバラの組み合わせ

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こちらが、5月の開花時期の様子です。

壁面の上の方で、ピンクの一重咲きのつるバラ、モーツアルトが咲き、

その下で同じピンクのオールドローズのアンリ・マルタンが丸い花形で

咲いています。

同じピンク同士の組み合わせですが、花形が異なるので、これはこれで

マッチしているかな〜と思っています。

花色や花のカタチ、花が咲く時期など、いろいろなファクター(要素)を

考慮して配置するのが、バラの風景を作る醍醐味ですね。

イメージ通りに風景が出来上がった時は本当に嬉しいですね。

でも、なかなか思った通りに行かないことの方が多くて、毎年試行錯誤の連続で

チャレンジしています。


● 下垂しても咲くつるバラを効果的に誘引する

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こちらは、先ほど紹介した前庭の外構の小壁です。

道路側から見たアングルです。

ここで注目していただきたいのは、この高さ1.5メートルほどの壁面の上部を乗り越えて、つるバラの枝を

下向きに誘引しているという点です。

バラをはじめ植物は、一般的に「頂芽優勢」の性質を有しているため、枝の頂点に栄養を送り、そこで花を咲かせる

ということになります。

つるバラも、この性質を使って、枝を水平に倒すことでたくさんの「頂芽」を作り出し、たくさんの花を咲かせる

というのが、教科書の解説にも書かれています。

しかし、中には、枝を下垂させても花を咲かせる品種のバラもあるのです。

その代表的なバラが、早咲きのモッコウバラです。

モッコウバラは、下垂させて滝のように花を咲かせることが出来ますが、それがモッコウバラらしい、

とても美しい風景を作り出します。

我が家の前庭のこの小壁に誘引しているつるバラ、モーツアルトも、下垂しても花を咲かせるという性質を

持っています。

ここでは、その性質を使って、株元が壁の裏側にあるにも関わらず、壁の上部を乗り越えて下垂させ、

壁の反対側(道路側)でも花を咲かせようと、このような誘引方法をとっています。


● 様々な誘引法方法を試してみることで、魅力的な風景が作れます

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こちらが、今年5月の開花の様子です。

前庭を前面道路側から撮影した一枚です。

シンボルツリーの株立ちのエゴノキを植えている側の花壇には、バラは植えていませんが、道路側の壁にも

ピンクのバラ、モーツアルトがたくさん咲いているのが見えると思います。

小壁の向こう側(裏側)に株元があるのですが、小壁の上を乗り越えて、下垂させて誘引した枝にも

花がちゃんと咲いています。

このように、つるバラの品種特性を理解した上で、適正な誘引を施せば、様々な風景が作り出せます。

例えば、道路ギリギリにあるフェンスや壁面にも、内側の庭から道路側(外側)に向かって下垂させるように

誘引することで、庭の外側にもバラの花を咲かせることが可能になることもあります。


都市部の限られた狭い庭では、なかなか思い通りにつるバラを咲かせることが難しいことも多々あると思います。

安易に諦めていたことが、バラの品種特性をうまく利用し、適切に誘引を行えば、理想に近い風景を作り出すことも

可能になるかもしれません。

今回の記事を参考にしていただき、いろいろ試していただければ幸いです。



今回は、前庭の壁面を使ったつるバラの誘引について書きましたが、次回は、中庭のつるバラやパーゴラなどに

誘引したつるバラのことなどを書いてみようかと思っています。

乞うご期待!


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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