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専門家「風景」をつくるガーデニング術

イギリスで訪ねた庭レポート vol.14(番外編) ホランド・パークとその周辺の街並み編

居場英則

昨年の2018年の5月、世界的に有名な日本人ガーデンデザイナー、石原和幸氏のサポートメンバーとして、

イギリス・ロンドンで開催されたチェルシー・フラワーショーに、石原さんの庭をつくりに行ってきました。

早いもので、それから1年が経ちました。

昨年のチェルシーフラワーショーで、石原さんのコンテストガーデンづくりに参加させていただき、

フラワーショー開催中の庭のメンテナンスもさせていただくことになって、都合3週間ほどイギリス・ロンドンに

滞在することができ、その間、ロンドン市内や近郊に点在する世界的に有名なガーデンをいくつも見て回りました。

こちらのディノスさんのコーナーで、僕が訪ねたロンドン近郊の庭をレポートさせていただくことなった

この企画、いよいよ最終回になりました。

今回は番外編として、「ホランド・パークとその周辺の街並み」編と題してご紹介いたします。

チェルシーフラワーショーでの石原さんの庭づくりのサポートメンバーとして、イギリス・ロンドンに到着した日、

滞在先のホテル(宿舎)にチェックインを済ませた後、自由時間となりました。

宿舎周辺の散策を兼ね、宿舎から一番近い公園へ行ってみようということになり、向かったのがホランド・パーク。

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宿舎から、歩いて20分ほどの場所に見えてきたのが、こちらのホランド・パークの立派なエントランス・ゲート。

ここで、ホランド・パークについて、概要を少しご紹介しておきましょう。

ロンドン市内で最も有名な公園といえばハイド・パーク(Hyde Park)ですが、その西側、ロンドンでも一二を争う

高級住宅街のロイヤル・ケンジントン・チェルシー地区にあるのが、ホランド・パーク(Holland Park)。

リージェント・パークやリッチモンド・パークなど、ロンドンにある有名な公園の多くは、

ロイヤル・パークといって、元々は王族が狩りを楽しむために所有していた土地でしたが、

ここホランド・パークは、1605年にウォルター・コープ伯爵の邸宅として建築されたホランド・ハウスを

娘が引き継ぎ、結婚相手である初代ホランド伯爵が相続していましたが、建物は第二次世界大戦で爆撃され、

廃墟のまま放置されていたそうです。

1952年に、ロンドン市に買い取られ、以後は、公共の公園として一般に開放されています。

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エントランスゲートを抜けた長いアプローチです

ビクトリア様式のタウンハウスなどが建ち並ぶ高級住宅街に突如現われる緑のオアシスは、

この付近の住民の憩いの場になっています。

広い公園内では、家族や友人でピクニックを楽しむことができる広大な芝生があったり、

ランニングを楽しむコースがあったりします。

夏には、野外で劇やオペラを観賞することもできるそうです。

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公園内をしばらく歩くと、素敵な光景に出会いました。

格調高い建物と緑豊かな大きな木の間に、噴水が湧き上がるオアシスのような池がありました。

ホランド・ハウスは、第一次、二次世界大戦でその殆どを破壊され、辛うじて残った部分は

現在、ホテルとして使われているそうです。

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レンガブロックの塀で区切られた公園の中の公園につながるゲート部分には、薄紫色のフジの花が満開でした。

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ゲートからつながるこちらの壁面にも、フジのツルが誘引されていました。

グレートーンのレンガブロックと淡い紫色のフジの花の調和がとても美しいです。

ロンドンの街中では、ちょうどフジの花が咲く時期だったこともあるのかもしれませんが、

建物にフジの花が誘引されている風景をよく見かけました。

フジというと和のイメージが強かったのですが、洋の風景にもとても良く似合っていたのが印象的でした。

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こちらは、公園内の一角。

芝生の中に、市松模様の石のチェス盤が作られていて、大きなチェスの駒で、市民が対戦していました。

面白い光景ですね。

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公園内に建物ですが、アーチの連続する廊下(コリドー)とそれにつながる建物が見えます。

建物の開口部が、回廊と同じアーチ型になっているのが面白いですね。

ちょっとしたデザインの妙ですが、こういう細かい所まで行き届いたデザインが、美しい風景を生み出すんですね。

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建物の前の噴水。

四方向に流れ落ちる水が水面に落ちる手前で、水面に設置された盃のようなもので反射して、

さらに面白い水の動きを作り出しています。

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こちらには、半分地中に埋め込まれたような建物がありました。

趣きのある屋根の形状が、きっと伝統的な民家のスタイルなのかなと思います。

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ホランド・パーク内には、実は、日本庭園があるのです。

この庭園は「京都庭園」と呼ばれ、イギリスのジャパン・ソサエティ創立100周年を記念する

ジャパンフェスティバル1991の一環として、京都商工会議所が京都造園業界の協力の下に建設したものです。

日本とイギリスの永遠の友好の象徴として、ロイヤルケンジントン・チェルシー区に寄贈されました。

1991年9月17日、日本国皇太子殿下並びに英国皇太子殿下のご光臨を得て開園されたそうです。

訪れた時は、真っ赤なツツジが満開でした。

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この京都庭園は、池泉回遊式庭園で、モミジの木々の間を流れ落ちる見事な滝も作られていました。

橋や鯉が泳ぐ池など、日本庭園の要素が取り入れられた京都庭園は、ロンドン市民にも大変好評のようです。

2012 年には、2011 年に震災の被害を受けた福島の復興を願い、「福島庭園」が増設されています。

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日本庭園の脇で見つけた光景。

何らかの理由で切り倒された太い松の幹に、小さいけれど枝ぶりの良い、盆栽のような松が接ぎ木されていました。

こんな遊び心が、随所にみられるホランド・パークです。

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隣接する住宅街の面したホランド・パークの一角。

ここには、日時計が設置されていました。

2匹の亀の彫刻が置かれたオブジェのような日時計です。

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至るところにベンチが置かれ、市民がちょっと休憩したり、本を読んだりできるようになっています。

その後ろでひと際目につくのが、セアノサスで、青い花が満開でした。

フジの花同様、ロンドン市街では、セアノサスが至る所に植えられていて、美しい風景作っています。

雨が少なく涼しいというロンドンの気候が合っているんでしょうね。

梅雨がある日本では、なかなかセアノサスをうまく育てることができなくて、ロンドンが羨ましい限りです。

ここからは、ホランド・パークを出て、宿舎に戻るまでの間に見た、ロンドンの美しい街並みを紹介します。

僕自身、普段は建築設計や街づくりを本業としているので、ここからは、街を彩る植栽と、

ロンドンの美しい街並みや建物も、少しですがご紹介できればと思います。

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こちらは、ホランド・パークの向かいのテラスハウスの駐車場に植えてあったライラック。

宿舎の前にもライラックの花が咲いていましたが、この時期、ロンドンではライラックもあちこちで見かけました。

濃い赤紫色の花も素敵ですが、斜めに張り出した枝ぶりも見事なライラックです。

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こちらは、豪華な邸宅のエントランスで咲く、見事なフジです。

赤いレンガブロックと白い窓の縁、そして薄紫色のフジの花は鉄板の組み合わせですね。

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同じ邸宅を正面から見たところ。

玄関扉の上に誘引されたフジの姿が絶妙です。

レンガブロックの壁を伝うツタも趣き深く、黒い玄関ドアが空間を引き締めています。

全てが素晴らしいです。

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こちらの邸宅にも、2階の高さまで壁面にフジが誘引されています。

手前の道路側の隅には、黄色い花のキングサリーも咲いています。

華美な花はひとつもないのに、瀟洒な建物と相まって、とても上品で美しい景観を作り出していました。

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また別の邸宅に外観に誘引されていたフジです。

旺盛に茂ったフジの花がボリュームを生み出し、街に彩りを添えています。

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宿舎に戻る道中で見かけた美しいアパートメント。

緩やかにカーブする道に沿って、建物も緩やかに曲線を描きながら建っています。

連続する三角屋根屋に、赤いレンガ色ブロックの中に走る白い縞模様、低層階の黒いバ跳ね出しルコニーなど、

このアパートメントがあるだけで、この街が美しく感じられます。

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脇道には、背の高い街路樹が道の両側からせり出し、緑のトンネルを作っています。

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こちらは、町中に突然現れた古い時代の建物。

教会か大邸宅のようですが、現在は、ホテルとして使われているようです。

イギリスの街並で良く見かける煙突が何本も立ち上がっていて、印象的なスカイラインと外観を構成しています。

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こちらも、おそらく高級なアパートメント。

かなり規模の大きなアパートメントですが、赤いレンガづくりの重厚な外観と

周囲の緑とのコントラストが美しく、街並に風格を与えています。

日本の集合住宅のように、バルコニーが並ぶ外観と違って、

窓のデザインがとても美しいです。

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窓のデザインのディテール(細部)が少しづつ異なりながら、

全体的には調和がとれています。

このアパートメントでも、屋上には何本もの煙突が突き出ています。

ロンドンは、緯度も高く気温が低いので、冬場に暖房をする必要はあるのですが、

夏は涼しいので、エアコンはいらないのだそうです。

ロンドンに単身赴任している高校時代の同級生から聞いた話です。

そういえば、ロンドンの集合住宅でエアコン(室外機)が設置されているのを

全く見かけませんでした。

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こちらは、比較的新しいスタイルの集合住宅、テラスハウスといった感じでしょうか?

東京の南青山とかの高級住宅街にありそうなデザインの建物です。

ロンドンではあまり見かけなかった低層(3階建て)のテラスハウスで、

雁行しながら(少しづつずれながら)建っています。

デザインはモダンなスタイルですが、外壁が古いアパートメントと同じ、赤いレンガタイルで出来ているので、

街路樹の緑にも映えるし、周囲の街並みに調和していて違和感がありませんでした。

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こちらはかなり新しい建物で、これなら東京にあってもおかしくないモダンな建築です。

低層階は一般的なアパートメントですが、上層階を見上げると、計算されて作り込まれたつくりになっていて

ルーフバルコニーには屋上庭園がつくられています。

また、ガラス張りのバルコニーには、エアコンの室外機もないため、スッキリして美しい外観を構成しています。


途中から、街並みや建築の話になってしまいましたが、如何でしたでしょうか?

本業で建築設計や街づくりに携わっていますので、ついついそう言うところに目が行ってしまいます。

これまでにも、いくつかの海外の都市を巡っていますが、意外にもロンドンは今回が初めてでした。

初めて見るロンドンの街は、とても美しく、そしてクリエイティブな印象を持ちました。

庭も街も、そして文化や歴史も、全てが奥深く、たくさんの刺激を受けました。


今回、世界的ガーデンデザイナーの石原和幸氏のサポートメンバーとして、

石原さんのチェルシーフラワーショーでのコンテストガーデンづくりに関わらせていただき、

その作庭の合間に、ロンドン近郊の庭をいくつも巡ることができました。

普段の生活の中ではなかなかできないようなことを、たった1ヶ月という短い期間でしたが

凝縮して体験することができたことは、これからの人生において大きな意味を持つと確認しています。

そして、このディノスさんのガーデニングサイトの中で、僕のイギリスでの体験レポートを書かせて

いただける機会をいただけたこと、本当にありがたく思っています。

こうして文章と写真と言う形で記録に残せたことは、僕にとっても大きな財産になりました。

また、もう1年以上も前の話でしたが、お付き合い頂きました読者の皆様方にも大変感謝しております。

いつかイギリスを旅される際に、お役に立てれば幸いです。


※ 僕の連載コーナーが終わるわけではありません。今後ともよろしくお願いいたします。


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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