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イギリスで訪ねた庭レポート vol.2 チェルシー薬草園編

ひで

今年2018年の5月、世界的に有名な日本人ガーデンデザイナー、石原和幸氏のサポートメンバーとして、

イギリス・ロンドンで開催されたチェルシー・フラワーショーに、石原さんの庭をつくりに行ってきました。

作庭期間の約2週間、その後、フラワーショー開催中の庭のメンテナンスもさせていただくことになって、

都合3週間ほど、イギリス・ロンドンに滞在していました。

その間、作庭の合間、そして週末の休みの時間を使って、ロンドン市内や近郊に点在する、

世界的に有名なガーデンをいくつも見て回ることができました。

自宅でバラの庭を作り始めて6年、新たな刺激とクリエーション(創造)の源を探しに行く旅でした。

こちらのディノスさんのブログコーナーで、僕が訪ねたロンドン近郊の12の庭をレポートさせていただくことに

なったこの企画、今回はその第2回。

チェルシー・フィジック・ガーデン(Chelsea Physic Garden、チェルシー薬草園)をご紹介します。


チェルシー・フィジック・ガーデン(以下、「チェルシー薬草園」と記載します。)は、

1673年に薬剤師名誉協会が薬草栽培のために設立した、イギリスではオックスフォード植物園に次いで

2番目に古い植物園です。

高い塀に囲まれた約1万5300㎡の敷地には、薬用や食用植物、絶滅が危惧される希少な植物など、

5000種以上の植物が育てられているそうです。

  ※Chelsea Physic GardenのHPは、こちら 


なぜ、僕がこの薬草園に興味を持ったっか?

それは、現在、地元・奈良のとあるお寺の境内の中に、薬草園をつくるというプロジェクトに

関わらせていただいているからなのです。

薬草というと、雑草のようなイメージの植物が多いのですが、それを「美しく風景をつくる」ような

ガーデンにしたい、そんな思いを持って、この薬草園を訪れました。

西洋と東洋の違いはあっても、きっと何か手掛かりになるものが見つかるはずだ、そう願っての訪問でした。

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チェルシーフィジックガーデンは、地下鉄「スローンスクエア」駅から徒歩で15分ほどの住宅街の中にあります。

チェルシーフラワーショーの会場となっているチェルシー王立病院のテムズ川出入り口から、川沿いに歩いても

5分ほどの場所にありますので、午前中の作庭作業が終わったあと、このチェルシー薬草園に足を伸ばしました。

このチェルシー地区、世界でも有数の高級住宅街として知られ、レンガ造りの瀟洒なアパートメントの前には、

高級車が何台も停まっていました。

赤いレンガ壁と新緑のコントラストがとても美しい街並みです。

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こちらは、チェルシー薬草園の入口の前にあった住宅。

あまりにもフジの花が美しいので、思わず撮影した一枚です。

ロンドンの5月は、まだバラの開花には早く、フジやシャクナゲが最盛期でした。

「風景をデザインするガーデニング」を標榜する僕にとって、つる性植物のフジはとても興味深い植物です。

時期もあるのかもしれませんが、ロンドン市内の街角では、ダイナミックに建物の壁面や外構フェンスに

フジを誘引してあるのが目につきました。

この邸宅でも、外構の白い壁の上の黒いフェンスに、青紫色のフジの花がびっしりと咲き誇り、

見事な風景を作っていました。

お洒落な建物を借景として、このフジの花が際立っていました。

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話が逸れたので戻します。

こちらが、チェルシー薬草園の出入り口です。

うっかり見過ごしてしまいそうな控えめなエントランスです。

周囲を高い壁で囲まれていて、このエントランス以外には、中の様子をうかがい知ることはできません。

大々的に宣伝していない、「知る人ぞ知る」的な装いも、付近の閑静な街並みに対し、

景観的な配慮がなされているように思いました。

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入り口を入ったところにあるチケットブース。

大小の可愛らしい小屋が並んでいました。

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まずは、チェルシー薬草園を代表するような象徴的なアングルで写真を撮ってみました。

冒頭でも書きましたように、このチェルシー薬草園は、ロンドン中心部の高級住宅地の中に、

エアポケット的に作られた植物園。

様々な薬草が植えられた庭園のすぐ近くには、高級感あふれるアパートメントが建っています。

むしろ、これら美しい外観を持つ高級アパートメントの前庭、いや、プライベートガーデン的な空間に

なっているように思えました。

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アングルを変えてもう一枚。

薬草がメインなので、一見すると野菜畑のようにも見えてしまいますが、園路が芝生で美しくデザインされていて、

見ていて楽しい空間です。

園路は人一人が通れるだけの狭い通路幅でした。

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さらにアングルを変えてもう一枚。

流れるような枝ぶりの、日本でいうとユキヤナギのような植物にピンクの花が満開で、花壇に彩りを与えています。

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薬草園の花壇には、大きな木や中低木も効果的に植えられていて、いわゆる家庭菜園のようには見えません。

単調な風景にならないように、植栽の配置に工夫がされています。

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こちらは、薬草花壇のメイン通路。

先ほどの芝生の園路に比べると、通路幅も広く、両側が芝生敷き、真ん中が砂利敷きになっています。

こういう格子型の花壇では、園路のデザインがとても重要になってきます。

縦横、強弱をうまくつけて、リズミカルで知的なデザインになっているように思いました。

おそらく、花壇のテーマごとに解説板が用意されているのだと思います。

分かりやすく、美しい設計だと思いました。

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薬草花壇の一番端の街区では、中木に黄色い花が満開となっていました。

薬草といえど、美しい花が咲き乱れていると、心打たれます。

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黄色い花の咲く木を中央にして、引きで写真を撮ってみました。

背後に迫る瀟洒なアパートメントと、緑豊かな薬草園が相互に引き立て合っているように思えます。

樹木の重なり、樹形など、どれもが計算されつくしたかのようなバランスです。

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薬草の仕立て方にも、いろいろと工夫が見られます。

真ん中には、枝を組んだオベリスクのような支柱が見られ、右側にはまるで鉄棒のような支柱が

設置されていました。

こういった植物を誘引する構造物や工夫、仕立て方など、いろいろと参考になります。


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こちらも切った木の枝を利用した支柱の事例。

人工的なものを使わない、美意識が感じられます。

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薬草園の中心付近には、水生植物を使った池も作られています。

この池の周りに、ベンチが設置されていて、疲れたら、ここで一服するのがおすすめです。

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薬草園の端っこ、隣のアパートメントに寄り掛かるように作られているのが、こちらの温室。

一部、 地面に埋めるように設置されています。

一見すると、建物のテラス(サンルーム)のようにも見えます。

それにしてもお洒落ないでたちで見に来られているお客さんですね。

さすがロンドン!

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温室の中は、こんな風になっています。

シダなどの植物が集められていました。

ガラスの片流れ屋根がとても軽快で、美しいサンルーム(温室)です。

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温室といえば、美しい温室が他にもいくつかあります。

後ろに見える高級アパートメントのペントハウスのような三角屋根の温室です。

下半分がレンガ造り、その上に木造のフレームにガラスで囲われて造りになっています。

とにかく可愛らしいのひとこと。

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その温室の内部は、こんな風になっています。

鉢植えの薬草が所狭しと並べられています。

絵になる、美しい温室です。

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こちらは、また別の温室。

内部はロックガーデンのような装い。

先ほどの温室とは異なり、ガラス面が大きく見渡せ、青い空が透けて見え、太陽の光が溢れ、

心も体も暖かくなる空間です。

出入口のドアが、アンシンメトリックな(左右対称でない)位置に切り取られているのも、

なかなか良いなぁと思いました。

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同じような写真ばかりで恐縮ですが、この温室も美しいと思いました。

まだ新しい温室で、木部の塗装がこげ茶色で、スチールのように見えます。

こちらの出入口は、シンメトリックな位置に、大きく開けられています。

こんな温室が自分の庭にあったら、毎日が楽しいだろうな~、そう思える温室でした。

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こちらはUの字につながる温室。

背景の高級アパートメントとの対比が面白いです。

あのアパートメントの窓から、この薬草園を見下ろすことができたら・・・と夢想するだけで楽しくなります。

ここに住んでいる人が羨ましい。

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温室の外には、苗の養生用のストックヤードも設けられていました。

バックヤードさえも美しくデザインされているところに脱帽です。

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このチェルシー薬草園が良いと思ったことのひとつが、この庭が地域の社交場となっているところです。

薬草を集めた小さな植物園ということで、おそらくほかの有名なガーデンに比べると、観光客の方が少なく、

代わりに、地元のロンドン子の方が、日々このガーデンに集うような雰囲気がありました。

まるで地域の教会のような役割を果たしているような感じがしました。

ガーデンの中庭、大きな芝生広場があり、その中で子供たちが楽しそうに遊び、周りにあるベンチに老人が腰かけ、

子供たちが走り回る姿を眺めている・・・、そんな昔ながらの街のコミュニティがここにはあるように思いました。

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このチェルシー薬草園を訪れた日が、ちょうど日曜日だったこともあり、この日は子供連れの家族が多かった

ように思います。

派手なアトラクションや乗り物など一切ない、静かなガーデンに子供たちが集い、薬草や植物に触れることが

できるなんて素敵。

きっと、ロンドンの子たちが優れた美意識と植物の知識を習得するのに、大いに役立っていることでしょう。

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芝生広場の横にはカフェがあり、オープンテラスで、アフターヌーンティーが楽しめます。

また、この日は、ホームパーティーのような催しも開催されていました。

ガーデンを身近に感じ、こよなく愛するイギリス人ならではのライフスタイルですね。

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改めて、チェルシー薬草園の中を巡ってみましょう。

中に、小さなゲートで囲われたコーナーがありました。

ボックス状に刈り込まれたツゲと蜂蜜色の石が積み上げられた門がある、少しフォーマルなコーナーです。

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そのコーナーの中から見える景色です。

さりげなくベンチが置かれ、そこから見える植栽そして、その奥に見える瀟洒なアパートメント。

植物が溢れる静かで美しいガーデンは、ロンドンの街の喧騒から逃れてリラックスできる場所でした。

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紫色の小花が咲く木は、日本でいうハナズオウに似ています。

手前左の黄緑色の葉や、右奥のシルバーリーフ。

様々な色の葉や花が織りなす、美しい空間です。

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この一枚は、特に気に入っているアングルで、チェルシー薬草園の雰囲気をよく表していると思います。

高級アパートメントに囲われた、都市の中のエアポケット的な庭。

控えめな花が咲く庭。

様々な樹形の木や草が、生き生きと茂る庭。

そんな魅力が凝縮されたガーデンが、チェルシー薬草園です。

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こちらが、最後の一枚。

まるで雑誌の1ページのような風景が撮影できました。

手前に水に浮かぶように生える水生植物、中央にこんもりと茂るハーブなどの香りの植物、そして花咲く高木、

さらに一番奥に、美しいロンドンの街並み。

チェルシー薬草園は、本当に素晴らしい場所でした。

今回僕が訪れたイギリスの庭の中でも、1,2を争うくらい感銘を受けたガーデンです。

さすが、薬草園だけあって、ここに身を置くだけで心が癒される、とても気のいい空間でした。

ロンドンの街中にあって、気軽に行けるパワースポットです。

是非一度、訪ねてみられてはいかがでしょうか?

そして、僕がここに来た目的、日本の寺院の境内に、薬草園を作るためのアイディア探し。

たくさんの刺激と気づきを得ることができたと思います。

この体験をこれからの活動の中で活かしていけたらと思っています。

            
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ひで

『進化する庭、変わる庭』をテーマに、庭歴5年目。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

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