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専門家「風景」をつくるガーデニング術

いにしえより続く薬草園、奈良県宇陀市・森野旧薬園

居場英則

今年も残すところあとわずかになりました。

今年は、新型コロナ禍で、とても大変な一年となってしまいました。

ようやくワクチンが開発され、来年はきっと良い一年になることを願うばかりです。

12月に入り、我が家では恒例のつるバラ誘引作業を始めています。

つるバラの誘引のあとは、木立性バラの剪定、鉢植えのバラの植え替え、寒肥やりなど、

来春に向けての、バラの作業が目白押しです。

一年間で、一番庭作業が忙しくなるシーズンです。

さて、ディノスさんの今年最後のブログ記事は、おススメの場所の紹介記事で、

奈良県宇陀市にある、「森野旧薬園」さんをご紹介します。

このブログコーナーでも以前の記事で書かせていただきましたが、現在、地元・奈良の世界遺産、唐招提寺の

境内に開祖・鑑真和上ゆかりの薬草園を再興するというプロジェクトに関わらせていただいています。

そんなこともあり、個人的に薬草への興味や関心が高まっています。

奈良で薬草園といえば、奈良県宇陀市にある「森野旧薬園」さんが有名です。

これまでに何度か、唐招提寺境内の薬草園プロジェクトの参考にと訪れたことがあります。

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森野旧薬園の歴史は、江戸時代中期に遡るそうです。

吉野葛の製造の傍ら、薬草の研究をしていた森野家第11代・森野賽郭が自宅の裏山に開いた薬草園は、

東京の「小石川植物園」と並ぶ日本最古の薬草園とのことです。

それ以降、300年もの年月、森野家は代々、その薬草を絶やすことなく守り続けてこられたそうです。

写真は、森野旧薬園への入口扉です。

扉は締まっていましたが、隣のお店(吉野葛販売)から入場することができます。

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こちらが、森野吉野葛本舗さんのお店です。

森野吉野葛本舗さんは、南北朝時代に創業されて450年余り、この地奈良県・大宇陀で

吉野葛の製造をされている老舗中の老舗です。

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お店を抜けて裏の建物に回ると、吉野葛の製造・作業場があります。

「葛」はマメ科のつる性植物で、花・茎・根と全ての部位が利用できるとても有益な植物とのこと。

その中でも、根から採取したでんぷん粉が「本葛粉」となるそうです。

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こちらは、建物に囲われた広場に接地されたU字型の巨大な水槽。

葛の根に含まれるでんぷんを、極寒期に地下水のみで繰り返し精製、乾燥させて、本葛粉がつくられます。

その精製作業に使われるのが、こちらのU字型の水槽です。

宇陀は、葛粉の製造期である冬の冷え込みがとても厳しく、純度の高い地下水に恵まれていることで

雑菌の繁殖が抑えられ、安定した高品質の葛粉が作られるようになったそうです。

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薬草園は、建物の急斜面の裏山に作られています。

その裏山の中腹から、宇陀の街並みを見渡すことができます。

手前の屋敷群が森野家の建物で、その中央にU字型をした巨大な水槽を見ることができます。

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薬草は、山の中の棚田のような場所に植えられています。

薬草は、半栽培、半自然といって、酒類にってはきれいな畑で育ちにくいものもあるそうです。

日当たりや風通し、水はけ、土壌など、さまざまな条件を加味して、それぞれの薬草に合う場所を選び

栽培・管理されているそうです。

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旧薬園の一番高い場所にあるエリアには、建物も作られていて、

その脇にも様々な薬草が植えられています。

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旧薬園内には、薬草だけでなく、貴重な薬木なども植栽されています。

植物園の中にある整備された薬草園とは対極の、自然の野山のような場所でした。

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裏山の一番高い場所から見下ろす、宇陀の街並み。

かなりの急こう配の山道を上ってきますのでしんどいですが、この宇陀の街並み風景を見れば

疲れも忘れ、長くこの場所に受け継がれて来た薬草の歴史と悠久の時を感じることができます。

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薬草園のある山を下り、再び森野吉野葛本舗さんのお店です。

漆喰塗りのとても風格のある日本家屋です。

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宇陀の街並みに残る古い建物です。

こちらも吉野葛を販売しているお店で、宮内庁御用達の看板が店内に飾られていました。

飾り気のない、観光地然としていない静かな宇陀の町はとても心地の良い場所です。

薬草にご興味のある方は、是非一度、森野旧薬園を訪ねてみられてはいかがでしょうか?


本記事が、今年最後の記事となります。

今年も一年間、読んでいただき、ありがとうございます。

また来年に引き続きよろしくお願いいたします。

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【 森野旧薬園 について 】

   住所:奈良県宇陀市大宇陀上新1880

    TEL:0745-83-0002

     ※ 詳しくは、以下↓の森野吉野葛本舗HP(森野旧薬園)をご覧ください。

       https://www.morino-kuzu.com/kyuyaku/ 

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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